原子を1個ずつ並べて回路を作る!?スマホの技術から生まれる「シリコン量子コンピュータ」

高校生向けやさしい量子技術解説

原子を1個ずつ並べて回路を作る!?スマホの技術から生まれる「シリコン量子コンピュータ」

公開日: 2026年10月7日 | トピック: 半導体シリコン方式 × 原子精度マニュファクチャリング

こんにちは!自作の地球磁場NMR(EFNMR)方式で量子コンピューターの開発に挑戦している高専生です。

スマートフォンやパソコンの頭脳である「半導体チップ」。
実は今、その半導体と同じ材料である「シリコン」の中に、原子を1個ずつ精密に並べて量子コンピュータを作るという驚異的な技術が世界で大注目されています。SF映画のようなミクロの世界を分かりやすく解説します!


1. なぜ「シリコン」で作るとすごいの?

現在ニュースでよく見る量子コンピュータの多くは、大きな筒のような冷凍機で冷やす「超伝導」や、空中に原子を浮かべる「イオントラップ」などの方式が使われています。どれも部屋を一つ占領するほど巨大な装置です。

そこで世界中の研究者が挑んでいるのが、「今のパソコンやスマホのチップと同じシリコンで作れないか?」というアイデアです。もしシリコンで作ることができれば、すでに世界中にある半導体工場の製造技術を応用できるため、小型化や将来の大量生産に圧倒的に有利になります。

2. 今回のニュース:原子を1個ずつ置く豪SQCが世界で選出!

オーストラリアのスタートアップ「Silicon Quantum Computing(SQC)」が開発する原子精度シリコン量子プロセッサ技術が、米テクノロジーメディアFast Companyの「2026年の次世代テクノロジー(Next Big Things in Tech)」に選出されたことが昨日発表されました。

今回のポイント

  • 走査型トンネル顕微鏡(STM)という原子を見る特殊な装置を使い、シリコンの結晶の中にリン(P)原子を1個単位で正確に埋め込む超絶技巧の製造技術。
  • 原子のズレが一切ないため、ノイズが極めて少なく、計算の正確さ(コヒーレンス時間)が非常に高い。
  • 「実験室の物理現象」だった原子操作を、実際のチップとして動作させる工学技術への進化が世界的に評価。

※参考元:Silicon Quantum Computing Named to Fast Company's 2026 Next Big Things in Tech List (PR Newswire) / SQC 公式サイト

3. 原子のどこを使って計算しているの?

原子の中には、プラスの電気を持つ「原子核」と、その周りを回る「電子」があります。これらは地球の自転のようにクルクルと回っており、まるで極小の磁石のような性質を持っています。これを物理学で「スピン」と呼びます。

磁石の「N極が上」を0、「N極が下」を1と見立てると、このスピンに電磁波(高周波パルス)をピピッとお行儀よく当てることで、「上と下が両方混ざり合った状態(重ね合わせ)」を作ることができます。つまり、埋め込んだ原子そのものが1個の量子ビットとして機能するのです。

4. 私たちの未来はどう変わる?

もしシリコン量子コンピュータが確立されれば、今のパソコンのCPUのように基板の上にちょこんと乗るサイズの量子プロセッサが登場するかもしれません。
将来のデータセンターの消費電力を劇的に減らし、手のひらサイズで超高度なAIや新素材開発の計算ができるスマートデバイスが誕生する夢が広がっています。

Column

EFNMRQC(地磁気NMR量子コンピュータ)制作者の視点

産業界で使われる量子マシンは、絶対零度近くまで冷やす超伝導方式や真空容器を要するイオントラップ方式などが主流で、設備も巨大です。
一方で、私が現在ハードウェアを自作しているEFNMRQC(Earth's Field NMR Quantum Computer:地磁気核磁気共鳴量子コンピュータ)は、地球そのものが持つ微弱な磁場(約50μT)を利用し、常温・大気圧下で動作させるアプローチをとっています。

ハードウェア開発視点からのメモ:
今回のSQCの技術を見ていて鳥肌が立ったのは、彼らが量子ビットとして操作しているのがまさに「リン原子の核スピン(核磁気共鳴:NMR現象)」である点です。
私が自作しているEFNMRQCも、水分子の中にある水素原子核(プロトン)のスピンをNMRで操作しています。SQCのように原子1個をシリコンに埋め込む超ハイテクな微細加工と、手巻きコイルやディスクリート回路で地球磁場を使う自作実験はアプローチこそ違いますが、「原子核のスピンに高周波(RF)パルスを当てて磁気共鳴を起こし、FID(自由誘導減衰)信号を読み取る」という物理原理はまったく同じです。
現在、受信コイルのノイズ対策やプリアンプのゲイン調整に試行錯誤していますが、手元のオシロスコープで見ようとしている信号が、最先端のシリコン量子コンピュータと同じ原理で繋がっていると実感すると、基板に向き合うモチベーションが一気に跳ね上がります。
読者のみなさんへ:
現段階ではまだ私たちの生活に直接大きな影響を与える場面は少ないですが、今回のように実用化研究がどんどん進んでいけば、今のAIのように私たちの生活へ多大な影響をもたらす時代がやってくるはずです。

そうなった時に、時代に乗り遅れずに最前線に立てる準備をしておくことが大切だと感じています。実際に現在でも、AIをうまく活用できる人とそうでない人とで大きな差が生まれ始めています。

「自分はまだ学生だから」「エンジニアではないから」と遠ざけず、自分の興味のある分野からで構いませんので、まずは量子コンピュータに関するトピックを1つだけでも検索してみることから始めてみてください。このブログでもそうしたきっかけになる記事を発信していきます!

「本当に動くのか?」「どうやって波形を出すのか?」など、気になった方はぜひブログのブックマークやXのフォローをお願いします!

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